最新注目ビジネスを発掘するプロダクトハント|5分で見方を理解
今よりもしかすると1手、世界を予測しやすくする方法があるかもしれません。まだ日本語になっていないけれど、世界では流行っていたり、今後の世界の流れを見る中でとても大事になる考え方やアイディアがあります。
たとえば、もう気づけば10年以上経ちますが、ブログサービスや無料ニュースメディアやSNS、ゲームのようなコンテンツに多様性をもたらした「FreeMium(フリーミアム)」という考え方。これは基本的なサービスの利用を無料で提供しながら、付加価値になる部分や利用を便利にするような機能に少額の課金要素をもたせるという仕組みです。この考え方は、直接的な課金だけではなくユーザーの数がビジネスの価値になるようなSNSやゲームなどと非常に親和性がありました。
その他にも、その後に登場してきた(5年以上経ちますが)UberやAirBNBのような「所有しない」という考え方をもたらした「Sharing Economy(シェアリングエコノミー)」、都度のタスクごとに個々人の間でダイナミックに受発注を行う「Gig Economy(ギグ・エコノミー)」など、世界の新サービスのトレンドを作ってきたビジネス用語は意外と日本語になっていないものも多いです。
私のずっと働いてきた業界である「ブロックチェーン」は今の時代、日本語化されていない新しい考え方を生み出している代表格と言えるかもしれません。
プロダクトハントってなに
さて、このブログの著者YAMAがこのブログや他の色々なコミュニティで行っているのはそのような日本語化されていない言葉の一つ「Product Hunt(プロダクトハント)」です。
プロダクトハントとは、簡単に言うとオンライン掲示板のようなオンラインプラットフォームです。このプラットフォームでは、ユーザーがおすすめの製品(プロダクト)の紹介情報を投稿できるようになっています。そして、他のユーザーによってコメントが得られたり、投票される仕組みになっています。その結果、最も多く得票した製品が、その日のリストの上位に表示されるというサービスです。
つまり、おもしろいプロダクトを紹介して、皆でコメントし合うオンラインの場所です。
このプロダクトハントという言葉は、2013年11月にRyan Hoover(ライアン・フーバー)によってProductHuntという会社、及び、サービスの名前で、生み出されました。このサービスは、シリコンバレーの世界的に有名な創業支援プログラムのY Combinator(ワイ・コンビネーター)から資金提供を受けました。そして2016年11月には、世界最大級の投資家とスタートアップのデータベース提供、及びマッチングを手掛ける企業AngelList(エンジェリスト)によって約20億円で買収されました。
Angelistはこの買収によって、企業のオーナーとして色々とものを言える立場になりました。しかし彼らは、この企業買収後も、サービスの毛色は変えずにちゃんと今までの流れを踏襲してやっていくことを表明しました。プロダクトハントは市場のユーザーからだけではなく、買収した会社からですらもブランドの独自性と価値が認められたということです。
さて、有名な会社が買収するということは、それをするのに見合う高い価値があったということかと考えられますが、ところで、このプロダクトハント社、つまり「おすすめ商品を掲示してコメントし合うサービスの何が優れているのか?」という点についてはわかりますか?
このポイントを紐解くことこそがまさにプロダクトハントの本質です。プロダクトハントという考え方を生み出したプロダクトハントで社を参考に、何故この事業が高く評価されたのかという重要な点を分解することで、プロダクトハントの見方を得られるのではないでしょうか。
なるべくシンプルにまとめます。
プロダクトハント社の事例で理解するプロダクトハントの見方
新しいビジネスやサービスを見るときには、以下の3つの点を整理してみることをおすすめします。
- 課題: プロダクトが取り組もうとしている社会・市場の課題や問題はなに?
- 手法: 市場の課題や問題解決のアプローチ方法はなに?
- 結果: 問題が解決できると、どうなるの?
これを抑えるだけでシャープなプロダクトかどうかがある程度わかるようになります。
それ以外の情報は、類似プロダクトとの差であったり、語られた説明ロジックが本当なのかをサポートする裏付けになります。この1〜3を意識して話を聞くだけでかなりプロダクトが見やすくなります。
プロダクトハント社の場合
プロダクトハントが生まれた時代は、シリコンバレーに人と情報がどんどん集まって1つの市の中でスタートアップに関わる人の出入りや情報共有が活性化しているというような、シリコンバレー全盛期の最中でした。
当時から創業者のライアン氏はその中でもスタートアップに関するコミュニティー活動を積極的に行っており、このプロダクトがおもしろい!かなり熱い!と常日頃から話していました。
そういう日々を送っている中、彼はふと日々の動きの中でこう考えました。
- 課題: 自分のようにイケているプロダクトについて興味関心を持っている人たちはたくさんいるはずなのに、会って話す以外に知り合える場所が見つけられないのは不便
- 手法: 人々が参加できるオープンなプラットフォームにしつつ、スタートアップ界隈ならではの前向きで熱狂的な雰囲気を大事にする
そして生まれたのが「おもしろいプロダクト」について紹介し、コメントしたり、イイネ投票をする仕組みが出来上がりました。最初に招待する人々を慎重に選び、コミュニティの中の雰囲気が前向きで、おもしろいものを楽しもう!という各コメントで生まれる雰囲気は気を配ってチェックしていました。
これである意味、おもしろい製品について語り合う人々が集まる場所もできて、良かったねー・・ということだけでは終わりません。ボランティア活動のような結果に終わらず、「ビジネスとして伸びるかどうか」がここから大事になってきます。
ここまでの設計から、プロダクトハントのプラットフォームは、人々がおもしろいと思うもの、まったく新しいもの、イケているものを勝手に探してきて、共有して、良いものが見つけやすくなるという性質を持っています。
ここに目をつけたのがY combinatorとAngelistでした。
Y combinatorは企業・創業を支援するプログラムを活発に回している世界で最も有名と言えるIncubation(インキュベーション)という事業を手掛けています。その関係から、新しいプロダクトがどんどん集まってくる、それを支援するということが彼らの事業のエンジンでした。
このY combinatorがプロダクトハントを支援したことから推測するに、おそらく「プロダクトハントを通じてY Combinatorが支援するプロダクトがプロダクトを愛する人々によってサポートされる仕組みを作りたい」ということだったのではないでしょうか。そうするとこの2社間の事業シナジーがとても良くわかります。
更にその後、Angelistという世界最大級の投資家とスタートアップ企業のデータベースを構築し、投資契約などを支援するプラットフォーム事業を行っている会社から買収を受けました。この狙いはおそらく「Y Combinator界隈や、シリコンバレーなどの新しいプロダクトがどんどん集まってきて、更にプロダクト愛好家からの支援を受けているプロジェクトであれば、投資スべきスタートアップへのアクセスがより早く、より正確にできるようになる」ということだったのではないでしょうか。
しかも投資ではなく「買収」ということを考えると、プロダクトハントの創業者ライアンとしても「単独で好きな人が集まるプロダクトの場所づくりを独自でやっていくだけよりも、投資家のネットワークや、世界中のすでに大きくなった企業とのネットワークを持つAngelist一緒に事業を行ったほうが、事業の成長につながるだろう」という判断をしたのではないでしょうか。
つまり、以下のようにまとめられます。
- 結果: おもしろいプロダクトについてただ話すだけではなく、素晴らしいプロダクトの発見から世界的な成長を支援する一気通貫のプラットフォーム
ここまでわかると、ああ確かにそれは大きな投資が動いて然るビジネスだなあとなんとなく感じられないでしょうか。これがプロダクトハントという言葉を生み出したプロダクトハント社を例にした、1〜3の事業価値や潜在性の分解でした。
- 課題:
自分のようにイケているプロダクトについて興味関心を持っている人たちはたくさんいるはずなのに、会って話す以外に知り合える場所が見つけられないのは不便 - 手法:
人々が参加できるオープンなプラットフォームにしつつ、スタートアップ界隈ならではの前向きで熱狂的な雰囲気を大事にする - 結果:
おもしろいプロダクトについてただ話すだけではなく、素晴らしいプロダクトの発見から世界的な成長を支援する一気通貫のプラットフォーム
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